QUANTS OVERVIEW · COMPANIES
ISSUE 01 / 2026
Jump Trading
マーケットメイカー / HFT
3行サマリ
- 1999年にシカゴで設立されたHFT・マーケットメイキング企業。先物・オプション取引を起源とするシカゴのトレーディング文化を体現。
- マイクロ波通信塔への投資に象徴される、マイクロ秒単位のレイテンシー削減に対する執念で知られる。
- Jump Crypto(2021年設立)で暗号資産市場に大規模参入するも、2023年に規模を縮小。伝統金融からクリプトへの参入と撤退の典型例。
基本情報
| 企業名 | Jump Trading, LLC |
| 設立 | 1999年 |
| 創業者 | Bill DiSomma、Paul Gurinas |
| 本社 | Chicago, Illinois, USA |
| 従業員数 | 約1,000名 |
| 収益 | 非公開 |
| サブ業界 | 高頻度取引(HFT)/ マーケットメイキング |
事業概要
Jump Tradingは、シカゴを拠点とするプロプライエタリ・トレーディング企業。CMEやCBOEなどシカゴの取引所を起源とし、先物・オプション市場でのマーケットメイキングとHFTを主力事業とする。
レイテンシー(取引遅延)の削減に対する投資は業界でも際立っており、シカゴ〜ニューヨーク間にマイクロ波通信塔を建設したことで広く知られる。光ファイバーよりも高速なマイクロ波通信により、ミリ秒以下の速度優位を確保する。
2021年に暗号資産部門Jump Cryptoを設立し、DeFi(分散型金融)やブロックチェーンインフラへの大規模投資を開始。Wormholeブリッジの開発にも関与したが、2022年のWormholeハッキング事件($320M被害)やFTX破綻の余波を受け、2023年に暗号資産事業を大幅に縮小した。
競争優位
- レイテンシー技術: マイクロ波通信塔、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、カーネルバイパスなど、ハードウェアレベルでの速度最適化。
- シカゴのトレーディング文化: CME/CBOEのフロアトレーディング時代からの知見が、電子取引時代にも活きるマーケット構造への深い理解。
- グローバル展開: シカゴに加え、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、シドニーに拠点を持ち、24時間体制でグローバル市場をカバー。
- リサーチへの投資: 量子コンピューティング、機械学習、ブロックチェーンなど先端技術への研究投資を継続。
業界への影響
- レイテンシー競争の象徴: マイクロ波通信塔への投資は、HFT業界における「速度の軍拡競争」の象徴として広く議論された。
- HFT規制議論: Jump Tradingを含むHFT企業の活動は、市場の公平性やフラッシュクラッシュとの関連で規制議論の対象に。
- クリプト参入と撤退: 伝統的なHFT企業が暗号資産市場に大規模参入し、その後撤退するという事例は、TradFiとDeFiの融合の困難さを示した。
- シカゴのトレーディング文化の継承: フロアトレーダーの時代から電子取引時代へ、シカゴのトレーディング文化を次世代に繋いだ。
💡 Key Insight
Jump Tradingの歴史は、HFT業界の進化の縮図である。物理的なフロアトレーディング → 電子取引 → マイクロ波通信 → 暗号資産という拡張の軌跡は、トレーディング企業が常に新しいフロンティアを求め続ける宿命を示している。