CREATOR ECONOMY · COMPANIES ISSUE 01 / 2026

アニメ企業
Cover Corp(カバー株式会社)

東証グロース上場(証券コード5253)、谷郷元昭(YAGOO)が率いるVTuber事務所。ホロライブプロダクションで88名のVTuberを擁し、FY2025/3売上434億円[2]・TCGが累計4百万部超を記録。「少数精鋭×グローバル展開×IPコマース」で業界最大手の地位を確立した。

3行サマリ

  1. 規模: 2016年6月創業。東証グロース(5253)上場。FY2025/3売上高434億円・営業利益80億円[2]で過去最高を更新。FY2026/3予想525億円[1]。従業員数約580名(2025年3月末)。
  2. 秀逸さの本質: IPコマース(グッズ・TCG・ライセンス)比率をFY2021の39.8%からFY2025の60.6%へ引き上げ、「配信」から「IP消費財」への転換を果たした点。特に2024年9月発売のTCGが単一商品で出荷4百万部超という前例のないヒットを記録し、収益構造を変えた。
  3. 派生効果: ホロライブEnglishが英語圏VTuber文化を主流化。北米での複数都市ソールドアウトコンサート、アニメイベント登壇など「日本発IPが英語圏でも物理体験を伴うIPになる」ロードマップを実証した。

A. 決算・事業規模

通期業績推移

売上高営業利益純利益YoY
FY2022/3約142億円(推定)
FY2023/3約216億円(推定)
FY2024/3301.6億円55.4億円41.4億円
FY2025/3434.0億円[2]80.1億円[2]55.6億円+43.9%
FY2026/3(予)525億円82億円57億円+20.9%

セグメント別売上(FY2025/3)

セグメント売上高YoY
配信・コンテンツ93.2億円+21.9%
ライブ・イベント77.9億円+39.1%
マーチャンダイジング205.3億円+64.6%
合計434.0億円+43.9%

マーチャンダイジングが全体の約47%を占め、TCG効果が主要ドライバー

FY2026/3 Q1(2025年4〜6月)

指標数値YoY
売上高96.3億円+50.1%
営業利益約10億円+16.5%
マーチャンダイジング58.4億円

TCG効果が四半期にわたって継続。マーチャンダイジングがQ1売上の約60%を占める

VTuber1人あたり収益(FY2025/3 推計)

1人あたり年間売上約4.87億円(推定)[5]
1人あたり演者報酬約6,440万円(推定)
営業利益率18.4%

B. 事業構造

4事業領域

1. 配信・コンテンツ事業

YouTubeライブ配信・動画投稿を基盤とする収益モデル。FY2025/3に全VTuberで年間27,000本超のライブ配信を実施。スーパーチャット(ファンがリアルタイムで投げ銭)・メンバーシップ(月額課金特典)・YouTube広告収益・音楽ストリーミング収益が主な収益源。YouTubeはプラットフォーム手数料30%を徴収し、残り70%をCover Corpと演者で分配する構造。

2. ライブ・イベント事業

幕張メッセ・さいたまスーパーアリーナ等での大型ライブ(1公演5,000〜40,000名規模)、北米ホロライブEnglishパフォーマンスツアー(2024年)でのソールドアウト達成など、FY2025/3に年間動員52万人(過去最高)を記録。オンライン視聴チケット(1枚3,000〜8,000円)も並行展開。

3. マーチャンダイジング事業(最大セグメント)

アクリルスタンド・ぬいぐるみ・タペストリー等のフィジカルグッズ、デジタルボイス・壁紙等のデジタルコンテンツ、そして2024年9月発売のTCG(トレーディングカードゲーム)が主力。TCGはポケモンカード・遊戯王に次ぐ国内TCG市場への参入に成功し、累計出荷4百万部超・関連イベント参加者15万人超を達成した。hololive SUPER EXPOでの限定グッズ販売も年次の大型収益機会となっている。

4. ライセンス・タイアップ事業

ゲーム会社・飲料・食品・コスメ等との企業案件(PR・タイアップ配信)、ゲーム・アニメ・漫画等へのIPライセンス、韓国Webtoon形式のマンガ展開(2024〜2025年)など。IPコマース比率(マーチャンダイジング+ライセンス)はFY2021/3の39.8%からFY2025/3の60.6%へ急上昇している。

C. 組織構造

会社概要

社名株式会社COVER(COVER Corp.)
設立2016年6月13日
代表取締役CEO谷郷元昭(Motoaki Tanigo / YAGOO)
本社東京都港区赤坂
従業員数約580名(2025年3月末推定)
証券コード5253(東証グロース、プライム移行準備中)
IPO2023年3月27日(東証グロース)

谷郷元昭(YAGOO)の経歴

ブランドグループ構成(2026年時点)

グループ内容特記
ホロライブ(女性・日本語)1〜6期生+ID+EN最大規模。宝鐘マリン・兎田ぺこら等が中核
ホロスターズ(男性・日本語)HOLOSTARS各ユニット2026年4月より個人活動重視に方針転換
hololive IndonesiaID1〜ID3期生東南アジア市場向け
hololive EnglishMyth/Council/Advent/Justice英語圏向け。Gawr Gura退所後も成長
hololive DEV_ISReGLOSS等2023年9月デビュー新ブランド。音楽・アイドル寄り

D. 業界における位置づけ

秀逸さの本質

  1. IPコマース転換の徹底: 配信収益(スーパーチャット・広告)に依存せず、グッズ・TCG・ライセンスの「IP消費財」比率を60%超に引き上げた。スーパーチャット依存からの脱却という課題を業界で最も早く解決した企業。
  2. TCGという新市場参入: 2024年のTCG出荷4百万部超は、VTuberIPがカードゲーム市場という全く異なる消費者層にも訴求できることを証明した。ポケモンカード・遊戯王と並ぶ存在感を短期間で獲得。
  3. 少数精鋭×グローバル3言語展開: 88名のVTuberで年間売上434億円を達成。1人あたり売上4.87億円という業界最高水準の資本効率性を示す。英語・日本語・インドネシア語の3言語圏で実質的に「グローバル事務所」として機能している唯一のVTuber企業。

CoverとANYCOLORの比較

指標Cover CorpANYCOLOR
FY2025売上434億円429億円
営業利益率18.4%37.9%
VTuber数88名170名超
主力収益マーチャンダイジング(47%)コマース(65%)
海外展開EN・ID(3言語)EN・中国(bilibili)
方向性少数精鋭・高品質・体験特化多数・高収益・コマース特化

課題・リスク

E. 主要エピソード

2017年
ときのそら(Tokino Sora)のデビューとVTuber事業への転換
Cover Corpが最初にリリースした「hololive」は3Dモーションキャプチャー配信アプリだったが、2017年のときのそらのデビューがVTuber事業への完全転換を促した。谷郷が「アイドルを作ろうとしたのではなく、気づいたらそうなっていた」と語る形で業態が変わっていったことが、VTuber産業の偶発的発展を象徴する。
2020〜2024年
Gawr Gura 450万登録者の衝撃と英語圏でのブランド確立
2020年9月デビューのGawr Gura(ガウル・グラ)は1ヶ月でVTuber最速100万登録者を達成し、最終的に450万人超(当時VTuber世界最多)に達した。英語圏でのホロライブ認知度を決定的に高め、hololive Englishの収益基盤を確立。2025年4月の卒業時には谷郷CEOが個人メッセージをXに投稿し、国際的に拡散した。
2023年3月
東証グロース市場にIPO(証券コード5253)
「VTuber事務所が上場する」という前例のないIPOとして注目を集め、上場直後の時価総額は3,200億円超(推定)[7]を記録。ブラックボックスJP等の分析メディアが詳細な企業分析を実施し、VTuber産業に資本市場が初めて直接評価を下した歴史的転換点となった。
2024年
北米ライブツアーでソールドアウト連続達成
ホロライブEnglishの北米パフォーマンスツアーは、VTuberアバターを大画面に投影するライブ形式でアメリカ各地でのソールドアウトを達成。「オタク文化のグローバル化」という文脈で米国主要メディアでも報道され、VTuberが物理的なコンサート産業に参入できることを証明した。
2024年9月〜
hololive OFFICIAL CARD GAME(TCG)の予想外の大ヒット
発売から短期間で当初予算計画を大幅超過し、FY2025/3のマーチャンダイジング売上(+64.6%)[2]の主要ドライバーに。累計出荷4百万部超・関連イベント参加者15万人超を記録。VTuberIPがトレーディングカードゲームという別ジャンルへの参入に成功した業界初の事例として注目された。
2026年4月
Holostars管理体制変更 — 選択と集中の方針転換
HOLOSTARSの管理体制を「会社主導の集団活動→個人活動重視」に転換すると発表。会社スタジオサポート・グッズ制作・音楽プロデュースの縮小を意味するこの方針変更は、男性VTuber事業の収益性課題への対応と女性VTuberIPへの経営リソース集中を示す重要な意思決定となった。

    References — 数値の出典
  1. カバー株式会社 IR業績ハイライト
  2. ホロライブFY2025年3月期決算 — Mogura VR
  3. Cover Corp IPO Filing 2023 — The Bridge
  4. Hololive Production — Wikipedia(英語)
  5. VTuber1人あたり年間売上高4.87億円 — VSTATS
  6. Holostars管理体制変更発表 — Cover Corp公式
  7. Hololive's IPO分析 — Blackbox JP