CREATOR ECONOMY · COMPANIES ISSUE 01 / 2026

アニメ企業
マッドハウス(Madhouse, Inc.)

1972年、虫プロダクション出身の丸山正雄・りんたろう・出崎統・川尻善昭らが設立した日本アニメ黄金期の代表スタジオ。今敏(パーフェクトブルー・パプリカ)、細田守(時をかける少女・サマーウォーズ)、新海誠初期作品の「育ての場」として国際的に高い評価を獲得。2011年に日本テレビが84.5%株式取得し完全子会社化、同年に共同設立者・丸山正雄が独立してMAPPAを創設するという転換点を迎えた。

3行サマリ

  1. 規模・出自: 1972年設立。共同設立者:丸山正雄・りんたろう(林太郎)・出崎統・川尻善昭ら虫プロ出身者。設立資金は東京ムービー(後のTMSエンタテインメント)の富岡豊が提供。スタッフ150〜200名規模(推計)
  2. 秀逸さの本質: 1970-2000年代の「黄金期スタジオ」として、今敏・細田守・新海誠の初期作品を制作。アニメ映画の芸術的評価を牽引した「巨匠群」の本拠地。
  3. 2011年の転換点: 日本テレビ(NTV)が84.5%株式取得(約12.4M USD)[1]、同年に丸山正雄がマッドハウス退社・MAPPA設立。創業精神の継承者がMAPPAとして独立した歴史的分岐点。

A. 決算

非上場(NTV HD連結)・財務情報非公開

項目内容備考
株主日本テレビHD(完全子会社)2011年2月に84.5%取得、その後完全子会社化
NTV取得時の金額約12.4百万ドル(¥999,999,924)[1]第三者割当増資により128,667株を取得
スタッフ数150〜200名規模業界推計、中規模スタジオ
収益モデル制作費受託(主)+制作委員会参加(一部)NTV系列の放映枠との優先的連携が強み

単独の財務諸表は非公開、日本テレビHDの連結に組み込まれる

NTV傘下入りの構造的影響

B. 事業構造

制作受託(主)とNTVグループシナジー

外部プロデューサーからのアニメ制作請負が主要収益源。NTV傘下であることから:

制作委員会参加(一部)

オーバーロード等の人気シリーズでは制作委員会に参加している可能性があり、その場合はブルーレイ・グッズ・配信権等から二次収益を得る構造。

代表的IPと収益シリーズ

継続的な収益をもたらすロングシリーズ

高評価の映画作品(過去)

Netflix連携

「ヴィンランド・サガ」Season1(2019年)はNHK・Amazonでの放映と並行してNetflixで国際配信され、海外で高評価。日本テレビ傘下での制作力を国際OTTプラットフォームに展開する重要事例。Season2はWIT Studioに移管された。

C. 組織構造

創業メンバー(1972年設立)

丸山正雄、りんたろう(林太郎)、出崎統、川尻善昭の4名が虫プロ解散後に設立。東京ムービーの富岡豊がスポンサーとして資金提供し、初期の共同制作体制を取った。

設立メンバーの質の高さが初期マッドハウスの芸術的評価を支えた。

今敏の台頭と急逝(1990年代後半-2010年)

今敏(Satoshi Kon)は1998年「パーフェクトブルー」でマッドハウスから映画デビュー。以後の代表作:

作品備考
1998年パーフェクトブルー長編デビュー作
2001年千年女優Mamoru Oshiiと並ぶ国際評価
2003年東京ゴッドファーザーズクリスマス劇場版
2006年パプリカヴェネチア映画祭出品・批評的大成功

今敏は2010年8月、膵臓癌のため46歳で急逝。制作中だった「夢みる機械」は未完成のまま残された。今敏の死はマッドハウスとアニメ映画界全体の損失として世界規模で悼まれた。

2011年:NTV資本入りと丸山独立

2011年2月NTVによる84.5%株式取得(約12.4M USD)
2011年6月丸山正雄がマッドハウスを退社・MAPPA設立(71歳)
2014年頃NTVによる完全子会社化完了

丸山はNTVの資本参加に先立って独立を決意していたとされ、「会社が外部資本に支配されるのを見たくなかった」と後のインタビューで語っている。MAPPAはその後「進撃の巨人Final Season」「チェンソーマン」「呪術廻戦」等のヒット作を連発し、マッドハウスを凌ぐ知名度を持つスタジオへ成長した。

D. 業界における位置づけ

1970-2000年代の「黄金期スタジオ」

マッドハウスは1970〜2000年代にかけて日本アニメの最高品質スタジオのひとつとして君臨。今敏・川尻善昭・りんたろう・出崎統・細田守ら「巨匠群」を抱え、アニメ映画の芸術的評価を牽引した。

2010年代以降の位置づけの変化

スタジオ代表作マッドハウスとの関係
MAPPAチェンソーマン、呪術廻戦、進撃の巨人FS丸山正雄が独立して設立(2011年)
ufotable鬼滅の刃、FGO独立系の高品質競合
CloverWorksSPY×FAMILY、BocchiSony系新興スタジオ
WIT Studio進撃の巨人、ヴィンランド・サガS2S1から引き継ぎ

NTV傘下に入り、MAPPAが独立した2011年以降のマッドハウスは、規模・話題性において競合の後塵を拝するシーンが増加。「かつての覇者」という印象が強まる一方、安定した制作体制でオーバーロードや「ヴィンランド・サガ」Season1等の中堅ヒットを継続供給するスタジオとして機能している。

今敏の遺産・国際的再評価

E. 主要エピソード

1972年
虫プロ出身者4名が設立
丸山正雄・りんたろう・出崎統・川尻善昭が虫プロ解散後に設立。東京ムービー(TMS)の富岡豊が資金提供。設立メンバーの質の高さが初期の芸術的評価を支えた。
1998年
今敏「パーフェクトブルー」公開
今敏の長編監督デビュー作。アイドルから女優への転身を巡るサスペンスが「夢と現実の境界」を独自に表現。後にダーレン・アロノフスキー「ブラック・スワン」への影響が公言される。
2006年
細田守「時をかける少女」マッドハウス制作
細田守は東映アニメーション退社後、マッドハウスで本作を制作。ロードショーは限定的だったが、口コミ・DVDで爆発的に広まり、現代日本アニメ映画の傑作として評価される。後の細田スタジオ地図設立(2011年)への布石。
2006年
今敏「パプリカ」公開
ヴェネチア映画祭出品・批評的大成功。2010年のクリストファー・ノーラン「インセプション」との構造的類似が広く議論される。映像的発明・夢と現実の境界を扱うコンセプトが「インセプション」と重なる点は広く認められている。
2009年
細田守「サマーウォーズ」公開
デジタルネットワーク社会を家族の絆で守る物語が大反響。日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞。細田守の「個人的/社会的テーマをファミリーアニメで描く」スタイルの確立点。
2010年8月
今敏が46歳で急逝
膵臓癌のため急逝。制作中だった「夢みる機械」は未完成のまま残された。世界規模で悼まれ、マッドハウスとアニメ映画界全体の損失として記憶される。
2011年
NTV資本参加(2月)と丸山独立・MAPPA設立(6月)
NTVが84.5%株式取得(約12.4M USD)。同年6月、共同設立者・丸山正雄(71歳)が独立してMAPPAを設立。「会社が外部資本に支配されるのを見たくなかった」と後に語る。創業精神の継承者がMAPPAとして独立した歴史的分岐点。
2011-14年
HUNTER×HUNTER(2011年版)全148話完走
原作・冨樫義博「キメラアント編」等の複雑な内容を含む大ボリュームシリーズを完走。マッドハウスの制作力・スケジュール管理能力を示す事例。
2019年
ヴィンランド・サガ Season1放映・Netflix国際配信
幸村誠原作の歴史ヴァイキング漫画のアニメ化。NHK・Amazonでの放映と並行してNetflixで国際配信され、海外での評価が高かった。Season2はWIT Studioに移管。

    References — 数値の出典
  1. Wikipedia: Madhouse, Inc.(英語)
  2. Wikipedia: Masao Maruyama(英語)
  3. Anime News Network Encyclopedia: Masao Maruyama
  4. Anime News Network「Paprika (movie)」
  5. IU Establishing Shot「Mamoru Hosoda: Best of Both Worlds」
  6. PMHawoc「The Silent Fall of Studio Madhouse」
  7. SF Encyclopedia「Madhouse」
  8. MAPPA企業ページ(関連)