湯浅政明・チェ・ウニョン共同設立の独立スタジオ——作家性重視・Adobe Animate導入・Netflix直接発注で日本アニメの「実験場」を担う
2013年、監督の湯浅政明とプロデューサー・アニメーターのチェ・ウニョンが東京・吉祥寺に共同設立。「SARU(猿)=人類に最も近い存在」という名称に込めた通り、大手スタジオとは異なる制作哲学を体現する。Adobe Animate(旧Flash)をフルデジタル制作フローに活用してコスト構造を刷新し、Netflixとの早期連携(2018年『DEVILMAN crybaby』)でグローバル直接発注モデルを確立。2020年に湯浅が代表取締役を退任してチェに経営を委ね、山田尚子監督を招聘して「外部有名監督を受け皿として制作する」モデルへ進化。文化庁メディア芸術祭大賞(2020年)を筆頭に芸術的評価は業界トップクラス。
サイエンスSARUは非上場の独立スタジオであり、公開財務情報は限定的。従業員数は推定50〜100名規模(推定)(非公開)。主要収益源はアニメ制作受託・企画・著作権収益とみられる。
| 収益タイプ | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| グローバルプラットフォーム直接発注 | Netflix・HBO Max等からのオリジナルシリーズ受注 | フラットフィー(一括支払い)。放映後興行と切り離された収益 |
| 製作委員会参加 | NHK・フジTV等との国内共同制作 | 版権収益を一部保持 |
| 劇場作品(海外配給連携) | GKIDS(北米)等との配給契約 | GKIDSはアートアニメ特化の北米配給会社 |
サイエンスSARUの制作モデルは「特定の監督の強い作家性を前面に出した作品」を中心に据える。大手スタジオが商業的確度を最優先するのに対し、同スタジオは「批評的威信でグローバルプラットフォームから直接発注を得る」独自の経路を確立している。英Guardianや米Varietyで頻繁に取り上げられる国際的批評家評価が、Netflix・GKIDSなどとの直接交渉を可能にする。
日本アニメ業界では「セル→デジタル移行はしたが実態は紙作業(ラフ→スキャン→着色)の継続」という非効率が続いていた。サイエンスSARUはチェ・ウニョン主導でAdobe Animate(旧Flash)によるフルデジタル制作フローを採用。Webブラウザ上での直接作画・編集環境を整備し、リモートワーク対応を早期に実現。Adobe社が公式ブログで「日本のアニメーション業界に刺激を与えるサイエンスSARUの新しい挑戦」として紹介し、技術的先進性が広く認知された。
| 作品 | 配信・放送先 | 年 | 備考 |
|---|---|---|---|
| DEVILMAN crybaby | Netflix(全世界) | 2018 | Netflix完全オリジナル・全世界同時配信。永井豪原作リブート |
| 映像研には手を出すな! | NHK・各配信 | 2020 | 文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞 |
| 日本沈没2020 | Netflix | 2020 | Netflixオリジナル |
| 平家物語 | フジTV・各配信 | 2022 | 山田尚子監督。Noitaminaフレーム |
| きみの色 | 劇場→各配信 | 2024 | 山田尚子監督。GKIDS北米配給 |
| 氏名 | 役割 | 経歴 |
|---|---|---|
| 湯浅政明 | 共同設立者・フリーランス監督(2020年退任後) | 1965年生。虫プロ→Production I.G→マッドハウスを経て2013年設立。米Adventure Timeゲスト監督(2013年)が設立のきっかけ |
| チェ・ウニョン | 共同設立者・現代表取締役(2020年3月〜) | 韓国出身のアニメーター・プロデューサー。Adobe Animate導入のドライバー。湯浅退任後の実務管理を引き継ぎ |
少数精鋭で「作品ごとに外部アニメーターを集める」プロジェクト型制作スタイル。京都アニメーションが「社員制・技術継承・安定品質」を特徴とするのに対し、サイエンスSARUは「フリーランス活用・作家性・技術実験」というアンチテーゼ的モデルを採る。韓国・欧米の国際的アニメーターとの協業実績も豊富。
秀逸さの本質:「商業規模は中小だが批評的威信でグローバルプラットフォームから直接発注を得る」という経路の開拓。大手製作委員会依存からの自立と、フルデジタル制作による制作コスト構造の刷新が、独立スタジオとしての持続性を支えている。山田尚子招聘によって「スタジオが監督を育成する」京アニモデルや「監督がスタジオを創る」スタジオ地図モデルとは異なる「第三の形態」を示した。
湯浅政明は細田守・新海誠と並ぶ「日本の次世代アニメを牽引する監督」として語られる。ただし湯浅は商業的ヒットより芸術的実験を優先する傾向が強く、三者の中で最もアートハウス寄りのポジションを占める。この「批評的先進性」がNHK・Netflix・GKIDSという「評価眼のある」プラットフォームとの相性を生む。