「にじさんじ」運営・ANYCOLOR 株式会社が VTuber 企業として世界初の株式公開を達成。公開価格 1,530 円に対して初値 4,810 円(3.1 倍)、上場 2 日目の時価総額 1,652 億円を記録したが、その後コマース偏重の在庫リスクが顕在化し、高成長から転換期を迎えている。
ANYCOLOR 株式会社は、VTuber グループ「にじさんじ(NIJISANJI)」を運営する日本の上場エンタテインメント企業。2017 年に田角陸が早稲田大学在学中の 21 歳で「いちから株式会社」として創業し、2021 年 5 月に ANYCOLOR へ社名変更した。
| 公開価格 | 1,530 円[1] |
|---|---|
| 初値 | 4,810 円(+214% / 公開価格比 3.14 倍)[1] |
| 上場日 | 2022 年 6 月 8 日 |
| 上場 2 日目 | ストップ高、時価総額 1,652 億円[2] |
| 上場市場 | 東京証券取引所 グロース市場 |
| 証券コード | 5032 |
| 吸収額(公募) | 約 23.9 億円 |
| 上場後最高株価 | 13,790 円(2022 年 10 月 27 日) |
田角陸は兵庫県出身、1996 年 2 月 3 日生まれ。早稲田大学基幹理工学部表現工学科在学中の 2017 年に「いちから株式会社」を設立した。創業当初の事業は「アニ文字(Animoji)を活用したアニメキャラになりきれるアプリ」だったが、VTuber ブームに乗り「にじさんじアプリ」の方向性に転換した。
ANYCOLOR の事業は「ライブ(スパチャ・広告)」「コマース(グッズ・CD・ボイス販売)」「プロモーション(企業案件)」の 3 軸。FY2023/4 時点で売上 141 億円・営業利益 42 億円・営業利益率約 30%[7] を達成。コマース比率は約 65% を占めた。月に 400 点以上の新商品を投入し、年間 4,932 SKU という規模のグッズ展開が高収益を生み出した。(出典確認できず)
ANYCOLOR の IPO は、VTuber を単なる YouTube 現象から「投資可能な IP 資産」へと昇格させた。「IP 所有 × グッズ × コマース」のビジネスモデルはアニメ制作会社・マンガ出版社・アイドル事務所をまたぐ新ジャンルとして機能することが証明された。上場時に従業員 30 名以上が億万長者になったと報道され、スタートアップとしての成功事例としても注目を集めた。
ANYCOLOR はライバー(所属 VTuber)の使用するキャラクター IP(アバター・名前・設定)を事務所が保有するモデルを採用。ライバーが脱退しても IP は ANYCOLOR のまま維持される。これにより過去コンテンツのマネタイズ継続・グッズ販売の安定化が実現した。ただし「ライバーが長年育てたキャラクターの権利を持てない」という構造的な緊張が、後のセレン龍月問題につながった。
| 指標 | ANYCOLOR(にじさんじ) | Cover(ホロライブ) |
|---|---|---|
| タレント数 | 200 名超(2024 年時点) | 約 70 名 |
| 運営スタイル | 個性重視・多様なキャラ設定 | ブランド統一・Quality 管理 |
| 主力収益 | コマース(グッズ)約 65% | グッズ + ライブ + ライセンス |
| テック内製化 | 低め(外部委託が多い) | 高め(3D システム内製) |
| 時価総額差(2025 年 11 月時点) | Cover の約 1/4 | ANYCOLOR の約 4 倍 |
ANYCOLOR は売上拡大のために大量のグッズ在庫を製造・仕入れるビジネスモデルを採用していた。2025〜2026 年にかけて需要予測と実需のミスマッチが生じ、在庫評価損が急拡大した。
上場後の最高値(13,790 円)から 2024 年には株価が約 1/3 まで下落する局面があった。主因はライブ配信収益の成長鈍化・競合の台頭・ANYCOLOR EN の大量脱退・企業ガバナンスへの疑念。2025 年 11 月の報道では Cover との時価総額差が 4 倍超に開いたと伝えられた。
2024 年 2 月、ANYCOLOR は NIJISANJI EN 所属 VTuber「セレン龍月」を「度重なる契約違反および SNS 上での虚偽の言動」を理由に契約解除した。田角陸 CEO が IR 資料で契約解除の業績への影響を「極めて軽微」(英語版:「negligible」)と説明したことが海外ファンの激怒を招いた。「タレントを粗末に扱っている」と受け取られ、SNS 上で「#SupportSelen」トレンドが発生。田角 CEO は後日この表現について謝罪した。
男性 VTuber グループ Luxiem は 2021 年 12 月のデビュー後、中国・東南アジアの女性ファン層に爆発的にリーチし業界を驚かせた。しかし Mysta Rias(2023 年 8 月卒業)・Ike Eveland(2025 年 4 月卒業)など Luxiem メンバーの相次ぐ脱退でブームが収束傾向に。業界内で「ANYCOLOR の待遇・契約」への疑念が高まった。
一部のグッズ販売がガチャ形式(ランダム封入)であることに対して、「搾取的なビジネス設計」との批判が生じ SNS で炎上。全種類集めるためのコストが高額になることへの不満が噴出した。