Audiusは分散型ストリーミングでアーティストへの90%収益還元を目指し、Royalは楽曲印税NFT化プラットフォームとして2022年にa16zから5500万ドルを調達した。しかしRoyalは2024年4月にマーケットプレイスを閉鎖してAI権利管理にピボット。Audiusは2025年12月にICEと正規ライセンスを締結し、Web3音楽インフラ路線へ転換した。
設立と技術基盤: 共同創業者Roneil RumburgとForrest Browning(元Stanford)が2019年10月に一般公開。最初はEthereumベースだったが2020年にSolanaブロックチェーンへ移行(高速・低コスト)。2021年8月にはKaty Perry、The Chainsmokers、Nas、deadmau5等がアドバイザー・投資家として参加を発表し、同年10月にはTikTok(ByteDance)がAudiusとの統合を発表した。
経済モデル: アーティストは収益の90%をAUDIOトークンで受領(Spotify等は約70%をレーベルが受け取り、アーティストへの還元率は実質15〜25%程度)。残り10%はネットワークのノードランナー(ステーカー)に分配。中間プラットフォーム手数料なし、ファンは無料でストリーミング可能。
| 年/時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2019年10月 | 一般公開(Ethereumベース) |
| 2020年 | Solanaへ移行、高速・低コスト化 |
| 2021年8月 | Katy Perry等がアドバイザー参加を発表 |
| 2021年10月 | TikTokとの統合を発表 |
| 2021年VC調達 | 6700万ドル(Multicoin Capital、Blockchange等) |
| 2022年ピーク | MAU 800万人超、登録アーティスト20万人 |
| 2022年7月 | ハッキングにより約600万ドル[7]相当のAUDIOトークン盗難 |
| 2025年12月 | ICE(欧州最大著作権管理団体)との正規ライセンス協定締結 |
創業と初期の実績: 創業者はJustin「3LAU」Blau(DJプロデューサー)とJD Ross(Opendoor共同創業者)。3LAUは2021年3月に自身のアルバムを11百万ドル分のNFTとして販売し「音楽NFT」の可能性を実証。2021年8月に1600万ドルのシード調達を完了した。
主要ディールと急成長: 2022年1月にNasのカタログから「Rare」「Ultra Black」の印税権をNFT化。1870点のNFTが完売し56万ドル超の収益を達成(参加者:The Chainsmokers、Miguel等)。技術的にはEthereumサイドチェーンのPolygon上でNFTを発行し、ユーザーは自己管理ウォレット不要でドル建て購入が可能だった。NFT保有者はトークン比例で定期的にストリーミング印税を受領する設計。
| 年/時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2021年3月 | 3LAUがアルバムをNFTで11百万ドル販売(音楽NFTの実証) |
| 2021年8月 | シード調達 1600万ドル[5] |
| 2022年1月 | Nas NFTドロップ — 1870点完売、56万ドル超[3] |
| 2022年11月 | シリーズA 5500万ドル[2](a16z、Coinbase Ventures、Paradigm)、累計7100万ドル[5] |
| 2023年 | 暗号資産市場崩壊。音楽NFT取引量が2022年比90%以上減少 |
| 2024年4月 | マーケットプレイス閉鎖。AI生成音楽の権利管理インフラへのピボットを発表 |
Sound.xyz: ミュージシャンが限定版「試聴NFT」(Edition)を販売するモデル。2024年時点でも運営継続中。少量・熱狂的ファン向けモデルで生き残っている。Catalog: 1/1 NFT(ユニーク版)の音楽NFTに特化し小規模ながら継続運営。Opulous(OPUL): 楽曲担保ローンという独自モデルで差別化を図ったが、2022年以降は静かに縮小。
「音楽著作権の所有権分散」という概念の定着: RoyalはNFTにより個人ファンがゲートウェイコストなしに印税共有できることを証明した。この概念は2025年時点でも業界のディスカッションの軸として残っている。
ブロックチェーン上の自動決済の実証: スマートコントラクトによる「ストリーミング→自動印税分配」は技術的に実現可能であることを証明した。従来の音楽業界では印税支払いまで6〜24ヶ月かかるケースが多いが、ブロックチェーンでは瞬時に分配可能。
ICEとのライセンス協定(2025年): AudiusとICE(ベルリン本部、欧州最大の著作権管理団体)の正規ライセンス締結は「Web3は著作権を侵害する」という認識を覆す重要マイルストーン。
Royal最大の誤算は「印税NFTを投機商品として購入する層」と「実際に音楽ロイヤルティを長期保有したい層」の乖離。暗号資産ブーム時は投機需要が実需要を上回り、ブーム終焉後に実需要だけでは事業規模を維持できなかった。
2022年7月のハッキング(約600万ドル盗難)は「スマートコントラクトが完全安全ではない」ことを実証した。またAUDIOトークンのガバナンスが一部大口保有者に集中しており、「分散型」との標榜との矛盾が指摘された。
| 路線 | 代表例 | 概要 |
|---|---|---|
| ライセンスインフラ化 | Audius | 著作権団体・ストリーミングサービスとの正規連携を通じた「決済インフラ」として機能 |
| プレミアム少量版 | Sound.xyz、Catalog | 熱狂的ファンコミュニティ向けの希少版デジタルコレクタブル |
| AI著作権管理 | Royal(新路線) | AI生成コンテンツが急増する中での権利帰属・印税分配ソリューション |
Audius × USDC(Circle)のモデルでは、ドル建てのAudiusサブスクリプション収益をアーティストに即時送金するモデルの試験が進行中。Spotify自身も2023年にNFT表示機能をテストしたが後に縮小。Apple Music、YouTube Music等のメジャーサービスは音楽NFT・トークン統合には依然消極的な姿勢を維持している。