ホロライブプロダクション運営・カバー株式会社が東証グロース市場に上場。VTuber 専業企業として世界初の株式公開を達成し、公開価格 750 円に対して初値 1,750 円(+133%)、時価総額 1,070 億円超でのデビューを果たした。
カバー株式会社は 2016 年 6 月に谷郷元昭(YAGOO)らが設立した VTuber プロダクション運営会社。2017 年 9 月の「ときのそら」デビューを皮切りに、日本語圏(JP)・英語圏(EN)・インドネシア(ID)の 3 ブランチに拡大した。モーションキャプチャ技術・3D アバターシステム・配信インフラを内製開発する「コンテンツ × テック」の垂直統合が特徴。
| 公開価格 | 750 円[1] |
|---|---|
| 初値 | 1,750 円(+133.3%)[1] |
| 上場日 | 2023 年 3 月 27 日 |
| 上場市場 | 東京証券取引所 グロース市場 |
| 証券コード | 5253 |
| 主幹事証券 | みずほ証券 |
| 公募・売出総額 | 約 107 億円 |
| 上場時時価総額(初値ベース) | 約 1,070 億円[2] |
2016 年設立から上場まで約 7 年の軌跡は以下のとおり。
主な要因は 4 つ。①ANYCOLOR の IPO 成功(2022 年)で VTuber 株への投資家関心が高まっていたこと、②FY2022/3 売上 127 億円・営業利益 30 億円という高収益体質、③「コンテンツ × テック」垂直統合モデルが単純なタレント事務所以上のバリュエーションを正当化すること、④ホロライブ EN の急拡大でグローバル成長可能性が可視化されたこと。
Cover の IPO は、VTuber 産業が「投資可能な資産クラス」として資本市場に本格的に認知された証左。中小 VTuber 事務所への VC 投資増加・ゲーム会社や出版社によるコラボ商業化の加速・「VTuber タレントの IP 資産化」という概念の定着を業界にもたらした。
FY2025/3 決算(売上 434 億円)の収益構造は「スパチャ依存」という業界のイメージを覆した。
| 収益源 | 概算比率 | 内容 |
|---|---|---|
| グッズ・マーチャンダイジング | 約 40% | ぬいぐるみ、アクリルスタンド、TCG など |
| ライブ・イベント | 約 25% | コンサートチケット、FC ライブ配信 |
| ライセンス・コラボ | 約 15% | 企業タイアップ、ゲーム出演、外部コラボ |
| 楽曲・音楽 | 約 10% | ストリーミング・物販・ライブ歌唱権 |
| スーパーチャット・メンバーシップ | 約 5% | 2023 年スパチャ総収益は約 14.7 億円(売上の約 3.4%) |
| その他 | 約 5% | — |
ANYCOLOR(にじさんじ)が外部委託主体であるのに対し、Cover はリアルタイム 3D キャプチャ・アバター統合・配信支援システムを内製。これにより IP 品質の統一管理・コスト削減・技術資産の蓄積・機密性の確保という 4 つの競争優位が生まれた。FY2025/3 時点で Cover の時価総額は ANYCOLOR の約 4 倍まで拡大しており、テック内製化の差が評価の分岐点となっている。
2020 年 9 月、ホロライブ所属の「赤井はあと」と「桐生ここ」が YouTube のアナリティクス画面を配信中に表示した際、「台湾」の文字が視聴国として表示されたことが発端。中国語圏の一部視聴者が「台湾独立支持」とみなして激しく批判し、bilibili での配信権が剥奪された。
カバーの当初声明が「一つの中国」に配慮した表現を含んでいたと受け取られ、国際ファンから強い批判を受けた。タレント 2 名を 3 週間の活動自粛処分とした判断も板挟みの限界を露呈。最終的にホロライブ中国は 2021 年に事実上解散した。
スーパーチャット世界ランキング 1 位(2020 年)を誇る桐生ここが、中国ユーザーによる組織的荒らし行為が常態化する中、2021 年 7 月に「言えない理由が多い」として卒業を発表。「事務所がタレントを守れなかった」という批判が上がった。桐生ここの「中の人」は個人活動(kson)として活躍を続け、VTuber の「卒業後の個人活動」問題を業界に突きつけた。Cover はその後、タレント保護ポリシーの強化・荒らし対策の強化を発表した。
| 時期 | 事案 | 概要 |
|---|---|---|
| 2020 年 9 月 | 台湾・中国問題 | 赤井はあと・桐生ここの配信が中国炎上。bilibili 配信権剥奪、ホロライブ中国が実質解散に |
| 2021 年 7 月 | 桐生ここ卒業 | 荒らし被害で卒業。ファンから運営批判 |
| 2022〜2023 年 | 脱退・卒業の相次ぎ | EN・JP 複数タレントが相次いで卒業。個々の理由は非公開 |
| 2026 年 4 月 | Holostars 縮小 | 男性 VTuber グループ Holostars の体制縮小が発表 |