『サマーウォーズ』興行収入16.5億円[1]の成功を踏み台に、細田守・齊藤優一郎が2011年にスタジオ地図を設立[2]。製作委員会モデルに対して「一定のIP主権を持つパートナー」として参画する独立スタジオモデルを日本のアニメ産業に実証した。
細田守は1991年に東映アニメーション入社。若手時代に劇場版ドラゴンボール等を手がけた後、スタジオジブリの宮崎駿から『ハウルの動く城』(2004年)の監督に打診されたが、諸般の事情で降板した。
その後マッドハウスに移り、2006年に『時をかける少女』(配給:角川映画)で長編デビュー。興収2.6億と規模は小さかったが批評的評価は高く、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞・日本映画評論家大賞アニメ部門1位などを受賞した。
2009年8月1日公開。制作マッドハウス、配給東宝。インターネット仮想空間「OZ」を舞台に家族・コミュニティの絆をテーマにした作品で、興行収入16.5億円[1]を達成した。各映画賞を席巻し、米アヌシーアニメ映画祭でも上映された。
同作でプロデューサーを務めた齊藤優一郎との信頼関係が深まり、後のスタジオ地図設立の直接の動機となった。
2011年4月、細田守・齊藤優一郎の二名が中心となってスタジオ地図株式会社を設立。社名の由来は「まだ誰も描いたことのない地図を作る」という精神。
設立の直接目的は次回作『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)の製作準備。日本テレビが主要パートナーとして参画し、「スタジオ地図・日本テレビLLP(有限責任事業組合)」も設立された。このLLPが映画派生事業(キャラクターグッズ等)のIP管理・収益分配を担う構造となった。
| 作品 | 公開年 | 興行収入 | 配給 |
|---|---|---|---|
| 時をかける少女 | 2006年 | 2.6億円 | 角川映画 |
| サマーウォーズ | 2009年 | 16.5億円 | 東宝 |
| おおかみこどもの雨と雪 | 2012年 | 42.2億円 | 東宝 |
| バケモノの子 | 2015年 | 58.5億円 | 東宝 |
| 未来のミライ | 2018年 | 28.8億円 | 東宝 |
| 竜とそばかすの姫 | 2021年 | 66億円 | 東宝 |
出典:各種メディア報道・映画興行成績データ
2013〜2016年頃、スタジオジブリが次世代への作品製作継続に疑問符が付けられる中、細田守は「ジブリの後継者」として国内外メディアに頻繁に取り上げられた。しかし細田は「ジブリとは異なるスタイルを目指す」と一貫して距離を置き、「家族・テクノロジー・社会」をテーマにした独自路線を確立した。
スタジオ地図は、大手スタジオに雇用される形でなく、監督・プロデューサーが独立法人を設立してIP原権を保持する日本のアニメ産業における少数事例の一つである。製作委員会モデルに対して「一定の主導権を持つパートナー」として参画する構造は、新海誠×コミックス・ウェーブ・フィルムと並ぶ独立系アニメスタジオのモデルケースとなった。
日本テレビは単なる出資者ではなく、LLPを通じて商品化・二次利用ライセンスに関与。テレビ放映権・見逃し配信権も包括的に確保するパートナーシップを形成した。「放送局とクリエイティブスタジオの新しいパートナーシップモデル」として業界の関心を集めた。
28.8億円は前作(バケモノの子58.5億)の半分以下にとどまった。アカデミー賞長編アニメーション部門ノミネートは得たが、国内では「細田守作品の中で最も難解で個人的な作品」という評価が定着し、ファミリー層が離れた。「監督の個人的体験をアニメに昇華しすぎた」という批評と、プロモーション戦略の課題が重なった。
国内興収66億円という最大のヒット作となった一方、評論家・海外映画祭での評価は「後半の論理的整合性に欠ける」という批判も目立った。カンヌ(2021年)で世界初上映されたが、国内外で毀誉褒貶が激しかった。
独立スタジオとして一定規模を維持しながら、各作品ごとに外部スタッフを大量調達する「フリーランス制作モデル」は、労働環境や品質安定化の面で批判を受けることもあった。京都アニメーションのような社員制スタジオモデルとは対照的なアプローチである。