日本語楽曲として史上初のBillboard Global Excl. US 1位、BillboardジャパンHot 100では21週連続首位。アニメOPがグローバルチャートのトップに立つという前例のない事態が、「アニメ×音楽×ストリーミング」の現代型ヒット方程式を実証した。
『【推しの子】』は赤坂アカ(原作)×横槍メンゴ(作画)による漫画作品。2020年3月から2024年10月まで『週刊ヤングジャンプ』(集英社)に連載され、全163話で完結した。累計発行部数は2024年時点で3,500万部超(推定)。
ストーリーの核心は「アイドルの闇・芸能界の欺瞞・転生」というミックスジャンル。地方の産婦人科医が人気アイドルAI(あい)の熱烈なファンであり、死後アイドルの子どもとして転生するという衝撃的な第1話が、初掲載当日から大きな反響を呼んだ。
2023年4月12日にアニメ第1期が放送開始(TOKYO MX等・dアニメストア配信)。制作はDoga Kobo(ドーガコーボ)、全11話構成。
オープニング主題歌「アイドル」(YOASOBI)は4月12日にリリース。AyaseがYOASOBIのコンセプト「小説を音楽にする」に則り、原作の世界観を楽曲に落とし込んだ。ikuraの多層ボーカルと変拍子・複雑コード進行が組み合わさった3分51秒の楽曲は、アニメ視聴者と音楽リスナー双方に刺さった。
| チャート | 記録 | 達成時期 |
|---|---|---|
| Billboard Japan JAPAN Hot 100 | 21週連続1位(前人未踏) | 2023年4〜9月 |
| Billboard Japan 年間チャート | 首位 | 2023年通年 |
| Billboard Global Excl. US | 1位(日本語楽曲史上初) | 2023年6月10日付 |
| Billboard Global 200 | 最高7位(J-POP史上最高) | 2023年 |
| Billboard Global 200 年間チャート | 42位(J-POP初のTop50入り) | 2023年 |
従来、日本語アニメOP曲は国内チャートでの成功はあっても、グローバルチャートTOP10入りは存在しなかった。「アイドル」の成功は、Netflix・Crunchyrollなどのグローバル配信プラットフォームが「コンテンツ発見チャネル」として機能し、音楽消費が連動するという新しい構造を実証した。
この構造は「コンテンツ×音楽」の掛け算が最大化される条件として業界に認識され、アニメ製作委員会がOP/ED曲選定に対して従来より高い予算・クオリティラインを設定するようになった。
製作委員会は KADOKAWA・集英社・動画工房・CyberAgent の4社構成(出典: Wikipedia「【推しの子】(アニメ)」)。集英社は原作権管理者、KADOKAWAは出版・パッケージ販売、動画工房は制作、CyberAgentは配信プラットフォーム(ABEMA等)と各社が役割を分担する。
なお、OPテーマ「アイドル」はYOASOBI所属のSony Music Labels(旧ソニー・ミュージックエンタテインメント、2024-09以降はEchoesレーベル)から発売されており、製作委員会とは別ラインで楽曲権利・原盤収益が流れる構造。
原作マンガの増刷・電子書籍販売増・グッズ販売・ストリーミング収益の全てで利益が連動する「オムニチャネル収益」の好例として業界に記録されている。
「アイドル」以前のYOASOBIは国内では有名だが海外認知は限定的だった。この曲を機に海外メディア・ファン層への認知が一気に拡大し、その後もアニメ・ゲーム(任天堂等)とのコラボが加速した。
シーズン1の爆発的ヒットに比べ、シーズン2(2024年7月〜)の社会的熱量はやや低下した。原作のストーリー展開が複雑化したこと、主題歌が「アイドル」ほどのインパクトを持てなかったことが要因として指摘される。「OP曲の引力がアニメ全体のヒットを牽引した」という「アイドル」モデルの依存性を裏から示す結果となった。
赤坂アカ(原作)は2024年のインタビューで、爆発的ヒット後のプレッシャーや連載継続の重さについて言及した。「社会現象化した作品を描くクリエイターへの心理的負荷」という問題提起を含む事例でもある。