2018年2月5日 | ボラティリティ売り / 構造商品リスク
2017年は「ボラティリティ売り」の黄金期だった。VIX指数は歴史的低水準(年間平均11.1)で推移し、ショート・ボラティリティ戦略は安定的にプレミアムを獲得し続けた。このため、VIX先物のショートポジションは個人投資家からヘッジファンドまで幅広い参加者に拡大していた。
XIV(VelocityShares Daily Inverse VIX Short-Term ETN)は、VIX短期先物指数の日次リターンの逆数を提供する仕組み商品で、Credit Suisseが発行していた。2016年から2018年初頭にかけて価格は4倍に上昇し、リテール投資家の間で人気を集めていた。残高は約$1.9Bに達していた。
しかし、XIV等のインバースVIX商品には構造的な脆弱性があった。VIXが急騰した場合、商品の価値は理論的にゼロに近づき得る。さらに、日次リバランスの仕組みにより、VIX先物の急騰を自己強化するフィードバックループが内在していた。
1月の米雇用統計が予想を上回る賃金上昇を示し、インフレ懸念からダウが-666ポイント(-2.5%)下落。VIXは10台後半に上昇したが、この時点ではまだ通常の範囲内だった。
株式市場の続落に伴いVIXが上昇を開始。通常の取引時間中にVIXは17から25へ上昇した。
引け後のVIX先物市場で、インバースVIX商品のリバランス(VIX先物の買い戻し)が集中。XIVやSVXY(ProShares Short VIX Short-Term Futures ETF)などのショート・ボラティリティETF/ETNが、損失をカバーするためにVIX先物を大量に買い戻す必要があった。この買い戻しがVIX先物をさらに押し上げ、さらなる損失とさらなる買い戻しという自己強化型スパイラルが発動した。
VIXは終値ベースで37.32を記録(1日の上昇率+116%、過去最大)。
XIVは1日で96%の価値を喪失。Credit Suisseは2月20日付での早期償還と上場廃止を発表した。XIVの約定条項には、前日比80%超の下落時に発行体が早期償還できる条件が含まれていた。
ボルポカリプスは、ボラティリティ売りが「コインを拾い続けるがトラックに轢かれる」という有名な比喩の完璧な実例となった。長期間にわたる安定的な収益が、一度の急変動で全て消し飛ぶテールリスクを体現した。
インバースVIX商品の日次リバランスは、VIX急騰時にポジティブ・フィードバックループを生む構造を内包していた。商品設計自体が市場の不安定性を増幅するという問題が認識された。
XIV保有者の多くは個人投資家であり、商品の構造的リスク(特に日次リバランスによる複利効果の劣化とテールリスク)を十分に理解していなかった。推定$2B以上の損失がリテール投資家に集中した。
| 企業 | Credit Suisse(XIV発行体)、ProShares(SVXY)、VelocityShares |
|---|---|
| 規制当局 | SEC、CFTC |
| 関連エピソード | COVID-19クオンツショック(2020年) — ボラティリティ急騰の再来 / LTCM破綻(1998年) — レバレッジとテールリスク |
「安定的な収益を長期間生む戦略が、構造的に安全であるとは限らない。」ボルポカリプスは、ボラティリティ売りという戦略が内包するテールリスクと、仕組み商品の自己強化メカニズムが組み合わさった時の破壊力を$2B超の損失で証明した。「小さく稼ぎ続けて一度で全てを失う」非対称リスクの教科書的事例である。