QUANTS OVERVIEW · INDUSTRY
ISSUE 01 / 2026
💰 株式L/S — ビジネスモデル
報酬体系・費用構造・資金調達のメカニズム。2/20モデルからマルチPMプラットフォームへの進化。
3行サマリ
- 伝統的な「2/20」(管理報酬2%+成功報酬20%)は圧縮傾向。平均は1.4/17程度に低下。一方、トップティアファンドは「パススルー費用」で実質的に高い報酬を維持。
- マルチPMモデル(Citadel・Millennium型)が台頭。50〜300人のPMに資本を配分し、個々のPMのリスクを厳格に管理。パススルー費用込みで実質7〜10%の年間コスト。
- 最大のコスト項目はデータ・テクノロジー・人件費。トップクオンツファンドのテクノロジー投資は年間数億ドル。人材獲得コストも急騰(PhD新卒で年俸$300K〜$500K)。
報酬体系の変遷
| モデル | 管理報酬 | 成功報酬 | 特徴 | 代表例 |
| 伝統的2/20 | 2% | 20% | ハイウォーターマーク付き | 旧来型ヘッジファンド |
| 圧縮型 | 1〜1.5% | 15〜17% | 機関投資家の交渉力で低下 | AQR等の大手 |
| パススルー型 | 0〜2% | 20〜30% | 運営費用を投資家に転嫁 | Citadel・Millennium |
| スマートベータETF | 0.05〜0.30% | なし | パッシブに近い低コスト | iShares・Vanguard |
費用構造(マルチPMモデルの場合)
| 費用項目 | AUM比率(年間) | 内訳 |
| 人件費 | 2〜4% | PM報酬・クオンツ研究者・エンジニア |
| テクノロジー | 1〜2% | データセンター・クラウド・ソフトウェア |
| データ | 0.5〜1.5% | Bloomberg・Refinitiv・オルタナティブデータ |
| 執行コスト | 0.5〜1% | ブローカー手数料・マーケットインパクト |
| 借株コスト | 0.3〜1% | ショートポジション維持のための借株料 |
| 管理・法務 | 0.3〜0.5% | ファンドアドミニ・監査・法務 |
| 合計 | 5〜10% | 投資家が負担する実質コスト |
💡 ポイント
マルチPMモデルでは管理報酬が低く見えても、パススルー費用を含めた実質コストは年間7〜10%に達する。それでも投資家が資金を預けるのは、ネット・リターンが十分に高いから。
資金調達と投資家構成
| 投資家タイプ | 比率(推定) | 特徴 |
| 年金基金 | 30〜35% | CalPERS・ノルウェーGPIF等。長期安定資金 |
| 大学基金 | 10〜15% | Yale・Harvard等。エンダウメントモデルの先駆者 |
| ソブリンウェルスファンド | 15〜20% | GIC・ADIA・CIC等。大口で交渉力が強い |
| ファンド・オブ・ファンズ | 10〜15% | 中小投資家のアクセス手段 |
| ファミリーオフィス | 10〜15% | 富裕層の資産管理 |
| ファンド自己資金 | 5〜15% | Renaissance Medallionは自己資金100% |
キャパシティ制約の経済学
- アルファの希少性: ファクターリターンは有限。資金流入に伴い超過リターンが漸減する
- マーケットインパクト: 大型ファンドほど売買が市場価格を動かし、執行コストが増加
- 最適AUM: 多くのクオンツ株式L/S戦略で最適AUMは$50〜200億程度。それ以上は自ら戦略を毀損
- ソフトクローズ: トップファンドは新規資金を制限(ソフトクローズ)して既存投資家のリターンを保護
- Medallion Fundの教訓: RenTechは外部投資家ファンド(RIEF等)と内部ファンド(Medallion)を分離。Medallionは$100億でキャップ
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