収束取引、ブラックショールズの創始者たち、25:1レバレッジ。そしてなぜモデルは崩壊したか。
| 取引タイプ | 内容 | 期待利益 |
|---|---|---|
| オン/オフ・ザ・ラン | 最新発行の米国債(オン・ザ・ラン、流動性プレミアムで割高)をショートし、1期前の国債(オフ・ザ・ラン、割安)をロング | 数bp。満期が近づくにつれスプレッドが収束 |
| スワップスプレッド | 国債利回りと金利スワップレートの乖離に賭ける | 数bp。理論的には同じ信用リスクなのでスプレッドは縮小すべき |
| 各国国債間裁定 | 欧州各国の国債利回りの収束に賭ける(ユーロ導入前) | ユーロ統一通貨の導入でスプレッドが縮小する見通し |
| 指標 | 数値 | 意味 |
|---|---|---|
| 自己資本 | $47億(ピーク時) | 投資家からの出資+累積利益 |
| バランスシート | $1,250億 | 借入金を含む総資産 |
| レバレッジ倍率 | 約25:1 | 自己資本の25倍のポジション |
| デリバティブ想定元本 | $1.25兆(推定) | スワップ・オプション等のノーショナル |
25:1のレバレッジでは、資産価値の4%低下で自己資本が100%消失する。通常時は「安全な」裁定取引でも、極端なストレス時にはわずかなスプレッド拡大が致命的になる。
| 欠陥 | モデルの仮定 | 現実 |
|---|---|---|
| 正規分布の仮定 | 市場リターンは正規分布に従う。極端な事象は極めて稀 | 市場は「ファットテール」を持つ。1998年の事象は正規分布では10億年に1回の確率だが、実際に起きた |
| 流動性リスクの無視 | ポジションはいつでも市場価格で清算可能 | ストレス時には流動性が枯渇。売りたい時に売れず、売れば市場を壊す。LTCM自身がマーケットになっていた |
| 相関の安定性 | 異なる市場のスプレッドは独立に動く(分散効果が効く) | 危機時にはすべてのスプレッドが同時に拡大。「質への逃避」で相関が1に収束 |
皮肉にも、LTCMの崩壊は現代のリスク管理を大きく進化させた。Millenniumの-5%ルール、Bridgewaterのストレステスト、Medallionのキャパシティ管理。すべてにLTCMの教訓が染み込んでいる。