QUANTS OVERVIEW · STRATEGIES ISSUE 01 / 2026

🎯 LTCM — アルファ源泉

収束取引、ブラックショールズの創始者たち、25:1レバレッジ。そしてなぜモデルは崩壊したか。

3行サマリ

  1. 収束取引(コンバージェンス・トレード):理論的に同じ価値を持つべき2つの資産のスプレッド(価格差)に賭け、スプレッドが縮小する際に利益を得る戦略。
  2. ブラックショールズ・モデルの創始者(Scholes/Merton)自身が設計した価格モデルで、債券・オプション・スワップ市場の裁定機会を体系的に発掘。
  3. 個々の取引の利益は微小(数bp)で、25:1のレバレッジで増幅。正規分布の仮定と流動性リスクの無視が、最終的に壊滅的失敗を招いた。

主要戦略

1. 債券収束取引

取引タイプ内容期待利益
オン/オフ・ザ・ラン最新発行の米国債(オン・ザ・ラン、流動性プレミアムで割高)をショートし、1期前の国債(オフ・ザ・ラン、割安)をロング数bp。満期が近づくにつれスプレッドが収束
スワップスプレッド国債利回りと金利スワップレートの乖離に賭ける数bp。理論的には同じ信用リスクなのでスプレッドは縮小すべき
各国国債間裁定欧州各国の国債利回りの収束に賭ける(ユーロ導入前)ユーロ統一通貨の導入でスプレッドが縮小する見通し

2. オプション・ボラティリティ取引

3. レバレッジの力学

指標数値意味
自己資本$47億(ピーク時)投資家からの出資+累積利益
バランスシート$1,250億借入金を含む総資産
レバレッジ倍率約25:1自己資本の25倍のポジション
デリバティブ想定元本$1.25兆(推定)スワップ・オプション等のノーショナル
⚠️ レバレッジの非対称性

25:1のレバレッジでは、資産価値の4%低下で自己資本が100%消失する。通常時は「安全な」裁定取引でも、極端なストレス時にはわずかなスプレッド拡大が致命的になる。

なぜモデルは崩壊したか

モデルの3つの致命的欠陥

欠陥モデルの仮定現実
正規分布の仮定市場リターンは正規分布に従う。極端な事象は極めて稀市場は「ファットテール」を持つ。1998年の事象は正規分布では10億年に1回の確率だが、実際に起きた
流動性リスクの無視ポジションはいつでも市場価格で清算可能ストレス時には流動性が枯渇。売りたい時に売れず、売れば市場を壊す。LTCM自身がマーケットになっていた
相関の安定性異なる市場のスプレッドは独立に動く(分散効果が効く)危機時にはすべてのスプレッドが同時に拡大。「質への逃避」で相関が1に収束

現代のリスク管理への教訓

💡 LTCMの遺産

皮肉にも、LTCMの崩壊は現代のリスク管理を大きく進化させた。Millenniumの-5%ルール、Bridgewaterのストレステスト、Medallionのキャパシティ管理。すべてにLTCMの教訓が染み込んでいる。

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