QUANTS OVERVIEW · STRATEGIES ISSUE 01 / 2026

⚠️ LTCM(Long-Term Capital Management)

債券裁定 · 1994-2000年 · ノーベル賞受賞者を擁した「ドリームチーム」の崩壊

3行サマリ

  1. John Meriwetherが1994年に設立。ノーベル経済学賞受賞者のMyron ScholesとRobert Mertonを擁する「ドリームチーム」。債券市場の裁定取引で1994-1997年に年率40%超のリターンを記録。
  2. 1998年8月のロシア危機を契機に崩壊。25:1のレバレッジがマージンコールの連鎖を引き起こし、$47億の損失。FRB主導で$36億の協調救済が実施された。
  3. クオンツファイナンス史上最大の教訓。正規分布の仮定、流動性リスクの過小評価、レバレッジの危険性を身をもって示し、現代のリスク管理の原点となった。

基本情報

項目内容
運用会社Long-Term Capital Management, L.P.
設立1994年
清算2000年(実質的に1998年9月に破綻)
創設者John Meriwether(元Salomon Brothers副会長)
主要メンバーMyron Scholes(ノーベル賞)、Robert Merton(ノーベル賞)、David Mullins Jr.(元FRB副議長)
ピーク時AUM自己資本$70億 / 想定元本$1,250億(レバレッジ約25:1)
手数料2% 管理報酬 + 25% 成功報酬
投資家大手銀行、中央銀行、富裕層、大学基金
主な戦略債券収束取引(コンバージェンス・トレード)、金利スプレッド裁定
本拠地グリニッジ、コネチカット州
サブ業界債券裁定 / レラティブバリュー

4観点で深掘り

栄光と破滅の6年間

📅 戦略史

1994年のドリームチーム結成から、驚異的リターン、1998年の崩壊、FRB救済、そして2000年の清算まで。

収束取引・ブラックショールズ・レバレッジ

🎯 アルファ源泉

債券市場の収束取引、オプション価格モデルの創始者たちによる戦略設計、そしてなぜモデルが崩壊したか。

$10億→$70億→$1,250億(想定元本)

💼 キャパシティ・AUM

レバレッジによる見かけの規模拡大。1997年の投資家資金返還(傲慢)。レバレッジの力学と崩壊のメカニズム。

ロシア危機・マージンコール・FRB介入

⚡ 転換点エピソード

1998年8月のロシアデフォルト、マージンコールの連鎖、FRB主導の救済、そしてMeriwetherのその後。


パフォーマンス概要

LTCM リターン

リターン(手数料後)備考
1994(3月-12月)+20%設立初年度。10ヶ月間の実績
1995+43%債券収束取引が絶好調
1996+41%2年連続40%超。投資家からの資金が殺到
1997+17%リターン低下。投資家に$27億を返還(「もう十分に資金がある」)
1998(1-8月)-52%ロシア危機で壊滅的損失。自己資本が$47億から$4億に
1998(9月)FRB主導で$36億の救済14の金融機関が協調出資。システミックリスク回避のため
1999-2000ポジション解消・清算救済後のポジション整理で一部回復するも、2000年に清算
⚠️ クオンツファイナンスの最大の教訓

LTCMの崩壊は「モデルは市場の近似であって市場そのものではない」という根本的な教訓を残した。正規分布の仮定、流動性リスクの無視、過度なレバレッジ。この3つの過ちは、以後のすべてのクオンツファンドのリスク管理に影響を与えている。

掲載基準の充足状況

基準軸評価根拠
A. 規模想定元本$1,250億。レバレッジ込みで世界最大級の規模だった
B. リターン◎(崩壊前)年率40%超を3年間。ただし最終的に壊滅
C. 構造影響◎◎リスク管理の近代化、レバレッジ規制、システミックリスク概念の確立に決定的影響
D. 持続性×わずか4年で崩壊。持続性の反面教師